公開: 著者:佐藤 崇(合同会社Properly) / この記事のnote版はこちら
①「リスケしたばっかりだもん、無理だよ」——工務店社長はためらった。でも進めた。公庫の担当者は言った、「今相談してくれてご賢明です」——リスケ後でも融資を受けられるケースがある(セーフティネットや地方自治体窓口)
② 引渡しまで3ヶ月以上工期があるなら——愛知県工務店社長も「あの施主怒ると思う」とためらった。でもお互いを守るためと納得した——あなたも検討だけでもして欲しい「合意書」締結を
資材の高騰、工事の遅延・停止——建設・土木業の経営者にとって、この数ヶ月は判断の連続です。
「資金が持つか」「施主に追加をお願いできるか」——どちらも正解がわかりにくい問題です。
このページでは、その2つについて実務的な情報と書類を無料で提供します。
数字がある。だから話ができるんだな。
工務店社長がつぶやかれたこの言葉は、すごく真に迫っていた。
「ナフサショック対応融資」という名の制度は、国レベルではまだ出てきていません。
政府が「在庫はある。問題は流通段階の目詰まりと買い占め」という立場を崩さない以上、コロナ融資のような専用制度は近々では出てこないでしょう。
ただし、自治体レベルでは独自の緊急融資制度が動き始めているところもあります(後述)。
その中で、実質的にナフサショック等の影響に対応できる融資として使えるのが以下の制度です。
民間金融機関経由で申請。市区町村の認定を経て信用保証協会が保証。通常の保証枠とは別枠で借入できる。
公庫の直接融資。外部環境の変化により一時的に業況が悪化している企業が対象。今回の状況に適用できるケースがある。
岡山県が「中東情勢緊急対応」として独自の融資制度を設けた。他県でも動き始めている可能性があり、地元の商工会議所・県庁に確認する価値がある。
リスケ後の企業の社長に同行し、日本政策金融公庫の窓口で以下の説明をしました。
担当者からは「今相談してくれてご賢明です」という言葉が返ってきました。融資の検討が始まっています。
「うちはリスケ後だから無理でしょ」とあきらめなくていいです。
そのときに使った説明の骨格はこうです:
a. ナフサショック等がなければ、今期の黒字確保は見込めている。資金繰りも安定する見込みだった。
b. しかしナフサショックの影響で——例えば3ヶ月工事が止まった場合——損益も資金繰りも相当悪化する。
c. aとbを数字で説明できる資料は既に作っている。資金繰り表は12ヶ月先まで作っている。
「数字がある。だから話ができるんだな。」——工務店社長がつぶやかれたこの言葉は、すごく真に迫っていた。
制度は「公庫ルート」と「民間ルート」で異なります。
🏦 公庫ルート|経営環境変化対応資金(公庫の直接融資)
🏢 民間ルート|セーフティネット保証5号(保証協会の保証+民間銀行の融資)
🏛️ 自治体ルート|岡山県「中東情勢緊急対応」融資(自治体独自制度の例)
リスケ後の場合の取り扱いは公式には明記されていません。ただ、「数字で説明できる状態」であれば、審査に乗せてもらえる可能性がある——このページの4月20日の実例が、まさにそれです。まず、数字を整えることから動き出しませんか。
「損益・資金繰りを、根拠をもって説明できる」——これが最大のポイントです。数字が見えていることが、この大ピンチで武器になった実例です。
4月20日の事例で、公庫との交渉に向けて私が用意した資料を紹介します。
同じ状況で悩んでいる経営者の方に、少しでも光になれば——そう思って公開することにしました。
提出しなかった書類
a. 融資申込スクリプト(電話口用)
「公庫に電話するのが怖い」「何を話せばいいかわからない」——そういう社長のためにご用意しました。
「電話口ではこう話せば、まず聞いてもらえる」という台本です。読み上げるだけでOKです。
公庫に提出した書類
b. 融資依頼書(公庫あて)
担当者との面談で社長が話すための台本であり、同時に担当者が稟議に掛けやすいよう整えた文書です。
「この社長は誠実に状況を把握している」と伝わることが大事です。
c. 資金繰り表|正常版 × ナフサショック影響版
12か月先まで作成。「仮に3か月の工期遅延があったなら」という影響シナリオを正常版と並べて提示。
「ナフサショックがなければ、ちゃんと回っていたはずだった」を数字で見せます。
d. 損益計画|正常版 × ナフサショック影響版
資金繰り表と同様に、2シナリオを比較提示。「外的要因がなければ健全だった」という文脈を損益でも裏付けます。
e. 地元資材会社が作ってくれた「資材調達環境レポート」
4月1日以降に値上げした資材・受注停止になった資材の一覧。A3用紙一枚にびっしり。
地元の業者が駆けずり回って作ってくれたものです。「地元では今、こんなことになっている」——これが案外、効きました。
机上の数字より、現場のリアルが伝わったのだと思います。
c・d・eはその会社の実数値が入るため、具体的な公開はできません。
a・bは、よかったら参考にしてください。会社名・数値は「〇〇」でマスクしています。実際の数値に差し替えてご使用ください。
※ これはあくまで申込書類の「たたき台」です。最終的な内容は担当窓口・専門家とご確認ください。
なんとか、乗り切りましょう。
受け取れる書類
✅ 書類a 融資申込スクリプト(公庫への電話口用)
✅ 書類b 融資依頼書(公庫あて・面談用)
フォームの「お問い合わせ内容」欄に、ご希望の書類名をご記入ください。
相談・営業は一切ありません。書類をお送りするだけです。
※ 入力いただいた情報はProperlyのみが管理します。第三者への提供・販売は行いません。
資料を作る時間がない方へ
「社長は電話するだけでいい」——その状態を作るのが、数字の番頭の仕事です。
a・b・cの数字を揃え、スクリプトを仕上げ、依頼書を自社用にアレンジする——それだけでも相当の時間がかかります。
現場と施主対応で手が塞がっている社長に、その余裕はないはずです。全部引き受けます。
愛知県の工務店の社長に、施主への追加請求合意書の締結を勧めたとき——社長は、はっきりとした顔で首を振りました。
「先生、そんな書類出したら……うちの施主さん、怒りますよ」
長年付き合ってきた施主に、お金の話を切り出すことへの恐怖が滲み出ていました。「先に値上げを言いに行く悪者になりたくない」という気持ち——私にはよく伝わりました。
もう一つ、こんな言葉もありました。
「でも……他の工務店さんは、こんなこと言いに行ってないんじゃないですかね」
自分だけが浮いてしまうのではないかという不安、世間体への意識——業界の横並び意識が、動き出す足を引っ張っていました。この2つの難色は、どちらも「弱さ」ではなく、誠実さの裏返しだと私は思っています。
施主だって、不安に思っているはずです。
「工事が止まったら困る。値段がどこまで上がるかわからない。」
施主にとっても、この状況は他人事ではない——
そう伝えたとき、社長の表情が変わりました。
「自分が言いに行く」ではなく、「一緒に状況を整理する」という切り出し方に変えた。
その社長は、その後施主に合意書を持参し、締結まで至りました。
次のTHEME 2では、その実務アプローチを解説します。
ナフサショック
標準的な建設工事契約約款(四会連合協定等)では、工事途中での実質的な請負代金の変更は「極めて困難」——この合意書の提供元の弁護士は、そう述べています。そうした知見を背景に、有り難くもこの状況に対応した合意書の雛形が公開されていますので紹介いたします。
ただし、「この雛形はそのままでは使えない」——これが、実際に関与(サポート業務の一環です)した私の感想です。
自社の方針を固め、法律文章に落とし込み、現場に展開していく——悩ましく難解なプロセスが必要です。
それでも、検討する価値は十分にあると私は思っています。
📋 実例|愛知県の工務店で顧問弁護士と協議した検討プロセス
この雛形を基に、実際に顧問弁護士と座って決めていった事項です。「会社としてどう考えるか」を固めないと一歩も進まない、実に悩ましい作業でした。
⚠️ 合意書の内容については、弁護士への確認をあわせてご検討ください。このページは実務上の参考情報の提供を目的としており、法的アドバイスではありません。
ナフサショック・リスケ中の工務店が、なぜ公庫担当者に「戦えます」と言ってもらえたのか。
約30秒で概要をつかめます。
セーフティネット5号が使えるかどうかも、施主への追加請求が通るかどうかも、
「今の資金繰りと損益がどう見えるか」で変わります。
資金繰り表がない・あっても自信がない——そういう状態なら、まずそこから一緒に整えましょう。
合同会社Properly 代表社員:佐藤 崇
相談無料・秘密厳守・強引な営業は一切ありません