中東情勢の影響により、原材料の入手が難しくなったり、資材価格が大きく上昇したりすることで、工事が止まってしまう可能性があります。

建設業・工務店・土木業では、材料が入らなければ現場を進められません。現場が止まれば、売上計上が遅れます。入金も遅れます。一方で、人件費、外注費、借入返済などの支払いは続きます。

このような状況で、従業員を休ませざるを得ない、教育訓練に切り替えざるを得ない、という場合には、雇用調整助成金の活用を検討することは選択肢になります。

政府・公的機関による周知状況 厚生労働省は中東情勢への対応として専用ページを開設し、原材料の入手困難や価格高騰等に伴い事業活動を縮小・休業等を余儀なくされた場合、要件を満たせば雇用調整助成金の支給対象になるとしています。中小企業庁・J-Net21(中小企業基盤整備機構)も同様に案内しています。
制度は全国共通ですが、周知は各地の労働局・商工会議所・商工会などが個別のペースで進めている状況です。コロナ禍のような一斉・大規模な特例告知とは性格が異なり、現時点では少しずつ広がっている段階と見受けられます。
参考: 厚生労働省「中東情勢関連ページ」 / J-Net21「中東情勢緊迫化に関する支援情報」 / 中小企業庁「中東情勢等を踏まえた支援」

注意点——コロナ禍の時とは、条件が異なります

雇用調整助成金は、コロナ禍の時に多くの会社が利用しました。そのため、「休業手当を払えば、かなり手厚く国が補填してくれる」という印象を持っている経営者の方も多いと思います。

今回の中東情勢・原材料高騰への対応は、コロナ禍のような新しい大型特例ではありません。「コロナの時のような手厚い特例が復活した」という話ではなく、「通常制度の範囲で、中東情勢や原材料高騰による休業等も対象になり得る」という整理です。ここを間違えると、資金繰りの見通しを誤る可能性があります。

コロナ禍の特例と現在の通常制度の違い

比較項目 コロナ禍の雇用調整助成金 現在の通常制度
位置づけ 新型コロナ対応の特例措置 通常の雇用調整助成金
生産指標要件 最近1か月の売上高・生産量等が前年同月比10%以上減少(時期により5%以上でも可) 最近3か月間の月平均値が前年同期比10%以上減少
中小企業の助成率 時期・条件により4/5、9/10、最大10/10の時期あり 原則 2/3
大企業の助成率 時期・条件により2/3、3/4、最大10/10の時期あり 原則 1/2
1人1日あたり上限 時期により9,000円、12,000円、15,000円等の時期あり 8,870円を上限とする基準あり
※毎年8月1日に改定
支給限度日数 緊急対応期間中は通常の支給限度日数とは別枠 1年で最大100日分、3年で最大150日分
計画届 緊急対応期間・経過措置期間は不要 通常制度の手続きに従う
(休業開始の前日までに提出が必要)

※上記は厚生労働省の雇用調整助成金ページおよび新型コロナ特例ページをもとに、経営者向けに要点を整理したものです。実際の申請可否は、管轄の労働局・ハローワーク等にご確認ください。(参考:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナ特例)」

建設業・工務店で確認したいこと

雇用調整助成金を検討する場合でも、まず確認すべきなのは自社の数字です。助成金が「使えるかどうか」より先に、会社の資金繰りがどうなっているかを整理する必要があります。

特に建設業では、資材価格の上昇や納期遅れの影響が、すぐに試算表に表れるとは限りません。未成工事・材料費・外注費・入金予定・借入返済が複雑に絡むため、数か月後になってから資金繰りの苦しさとして表面化することがあります。

雇用調整助成金は、雇用を守るための大切な制度です。
ただし、助成金だけで資金繰り全体が解決するわけではありません。
必要なのは、助成金・借入・銀行説明・支払予定・入金予定をバラバラに見るのではなく、会社全体の資金繰りとしてつなげて確認することです。

Properlyにできること

合同会社Properlyでは、建設業・中小企業向けに、資金繰り表の作成、今後の不足時期の確認、銀行説明資料の整理を支援しています。

中東情勢や原材料高騰の影響が気になる場合は、まず「自社の数字にどの程度影響が出ているのか」を一緒に確認するところから始められます。

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佐藤 崇
佐藤 崇
合同会社Properly/資金繰り管理の専門家

建設業・中小企業の資金繰り管理を専門とする実務家。セーフティネット融資の資料作成支援、雇用調整助成金をはじめとする公的支援の活用可能性の整理、銀行交渉の同席まで、社長の隣で動くことを仕事にしています。

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公開:2026年6月14日